スペースルブ MU

スペースルブ MUは、宇宙・真空環境で従来使用されていたフッ素グリースの放射線による分解と真空での耐摩耗性向上の課題を解決するために開発した真空用グリースです。
実験衛星SERVIS-1で2年にわたり、優れた長寿命と潤滑性を宇宙にて実証された国内唯一のグリースです。この実績から、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の承認を得て、金星探索機「あかつき」以後の人工衛星に採用されています。
スペースルブ MUの特長
- 1.低蒸発性
- フッ素グリースと同等の低い蒸気圧であり、基油の分解によるアウトガスの発生が少ないため、真空環境の汚染を最小限にします。
- 2.長寿命
- 基油はフッ素オイルのように放射線による分解や、鉄と反応してルイス酸や分解促進の触媒となるフッ化金属を生成しないため長寿命グリースです。
- 3.潤滑性
- フッ素グリースに比べ優れた潤滑性能を発揮します。
- 4.洗浄性
- 基油が炭化水素系で、他の油剤との相溶性があるため、フロンなどを使用しなくても洗浄が容易です。
主な用途と適用部品
- 宇宙関連設備、機器、半導体製造装置などの真空環境の潤滑
一般性状
試験項目 | 試験方法 | 試験結果 | |
---|---|---|---|
増ちょう剤 | - | ウレア | |
基油 | - | シクロペンタン油 | |
混和ちょう度 | JIS K 2220.7. | 300 | |
使用温度範囲 | - | -40℃ ~ 180℃ |
摩擦・摩耗特性
- スペースルブは、フッ素グリースに比べ摩擦係数が低く安定し、摩耗量も減少しています。
摩擦係数

比摩耗量

- ※試験には「フッ素グリース」は、宇宙用グリースとして実績があるフッ素グリースを使用しています。
耐放射線性
- 放射線照射量が変化しても、グリースのIRスペクトルに大きな変化は認められないことから、放射線に対して十分な耐性があります。
放射線照射後のIR分析結果

※出典:トライボロジー会議予稿集東京 2010-5
アウトガス特性
- スペースルブのアウトガスは、NASA(米国航空宇宙局)の基準を満たしています。
- 試験条件
- 真空度:7.0×10-3Pa以下
- 加熱棒温度:125±1℃
- 冷却版温度:25±1℃
- 装置運転時間:24h
- 初期試料重量:250~252mg
アウトガス特性結果
スペースルブ ML | スペースルブ MU | NASA推奨 | |
---|---|---|---|
TML (質量損失) % | 0.143 ± 0.015 | 0.570 ± 0.026 | 1以下 |
CVCM (再凝集物質重量比) % | 0.007 ± 0.000 | 0.085 ± 0.002 | 0.1以下 |
- ※記載の数値は代表性状値であり、保証値ではありません。また、適用例、使用温度範囲、数値は選定の目安となるもので、 実際のご使用に際しては、お客様にて、性能・効果ならびに安全性を良くご確認下さい。
- ※使用する前に安全データシート(SDS)をご確認下さい。
- ※記載の内容は、弊社の都合により、予告なく変更する場合があります。
- ※掲載されている写真はイメージ画像です。